いきなりですが、今年はエコロジー・ネタもこのブログで書いてみようと思います。
私の個人的な知識の整理が主な目的なので、対象や内容が一部地域(主にカナダ)に偏ると思いますが、まぁ興味のある人は読んでみてください。
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今回は、カナダ・バンフ国立公園のバイソン再導入計画の話。
現在、バンフはおろか、ロッキー周辺には全くいないバイソンですが、1870年ころにはその周辺を住処としていました。
しかし、1888年には、カナダにたった8頭、北アメリカ全体でも85頭にまで減少。
1910年に、アメリカ・モンタナから700頭がカナダに運ばれてきて、なんとか絶滅の危機は免れました。
その時、バンフにも33頭来て、今もBanff Buffalo Paddock(現在閉鎖)の柵の中で大切に保護されているのですが、もはやワイルドライフではありません。
Source; American Bison, Status Survey and Conservation Guidelines 2010, IUCN
※カナダのバイソンはプレーンバイソン
2000年、カナダ国立公園は運営の最優先事項に、本来あるべき生態系(ecological integrity)の回復を挙げる中で、ワイルドライフとしてのバイソン再導入は必須のものとなりました。
なぜなら、バイソンは「キー・ストーン種」に位置付けられているからです。
キー・ストーン種とは、その種が欠けると、生態系に大きな影響を及ぼす重要な種のことで、バイソンは、植物の多様性、種子の散布、野鳥の営巣を助ける役目があるといわれています。
バイソンが戻ってくることは、今まで欠けていた一種が復活するだけでなく、周りの生態系の回復にも大きな影響があると考えられているのです。
しかし、もともとここに住んでいたとは言え、現在は全くいない状況で、再びバイソンを解放した場合、起こりうる問題はたくさん考えられます。
現在、生活しているグリズリー、ウルフ、エルクなどと衝突が起きるかもしれません。
昔はなかった鉄道も、現在は山からすぐ近くに走っています。
住民感情も賛否両論あるでしょう。
と、いうことで立ち上がったのが、「Bison Belong」というプロジェクト団体。
市民、農場経営者たちが設立した非営利団体で、全面的にパークスカナダの支援をする立場で活動しています。
住民との意見交換、バイソンについての知識教育、研究者の講演会など、さまざまな取り組みを行いました。
住民の懸念事項についても、
・バイソンを開放するのは山の麓で、線路への接近の可能性を極力避ける。
・バイソンを、観光の見どころの一つとすることで、落ち込んでいる観光客を呼び込む効果も期待できる。
など広報し、住民の理解を得て行ったようです。
そして、先日2012年1月27日、カナダ政府・環境大臣と国立公園局長によって、正式にバイソンの再導入計画を立ち上げることが発表されました。(参考;パークスカナダのHP)
1年以内に、具体的な計画を固めるようです。
過去、地域的絶滅種の再導入の例はイエローストン国立公園のオオカミが代表的です。
イエローストンの場合、捕食者であるオオカミがいなくなったことで、被食者であるシカが激増し問題となったことが背景にありました。
家畜を獲るオオカミを導入することは、当時住民から大きな抵抗がありましたが、今では再導入の代表的な成功例として紹介されています。
さて。
バイソンの再導入は、どのような結果が待っているのでしょうか。
とても興味深い取り組みなので、今後もチェックしていきたいです。
※ちなみに、2012年1月24日のニュースによると、カナダ、エルク・アイランド国立公園のバイソン70頭がアメリカのモンタナに返されました。ある記事では100年かけた壮大な大移動、なんて言われてましたね。
なんか、クライミングの方と違ってノリがわからず真面目な文になりました。
近いうちに、次回を書けたらいいのだけど。
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