2010年3月アーカイブ

生態学会終了

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東京大学で開催された日本生態学会の年次大会が終了しました。

今回の大会では久々のポスター発表をしましたが、あまりのポスター数の多さに驚きました。年々、生態学会が大きくなっていることを実感します。また、今回は、生態系管理の部門で発表をしましたが、生態系管理といっても、研究基盤となる生態系管理の概念が非常に多岐にわたること(実際に、生態系管理の概念は、研究者の数だけあるとも言われている)、言い換えると、まだまだ整理されていなく混沌としているという印象を受けました。

私自身は、生態系管理(Ecosystem management、あるいは、Ecosystem-based management)は、より広義のエコシステムアプローチが意味するように、保全や管理対象をあくまでシステムとして捉え、その中での機能や動態を尊重することに主眼をおくものだと思っています。→Christensen et al. (1996) Ecol. Appl. その意味では、保全生物学という分野の広い意味での一部であるが、生態系の階層性(個体群、群集、景観など・・・)のごく一部にフォーカスするのではなく、それらの相互作用や相互依存性をも考慮して、システムの動態や健全性を維持、管理しようとするものだと思っています。良く言えば、柔軟な、悪く言えば、曖昧な概念だと思います。

しかしながら、学会に参加すると、この発表は、いわゆる保全というカテゴリのなかで発表したほうがよいのではないだろうかと思えるものもあります。それは、私の生態系管理に関する概念的な先入観(上述のような)によるものもあると思いますが、日本における生態系管理の概念的あいまいさを反映している気もします。

つまり、ここで述べたいのは、生態系管理の概念的なことについて、もう少し考えてみたいと思っているということです。曖昧なところをより熟考し、先入観に固まっているところをもっと柔軟に捉えたいです。ちなみに、どなたかこの議論に付き合ってくれる方、ぜひご連絡ください。

 

GCOEシンポジウム

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3月10日 横浜国立大学教育文化ホールにて、GCOE主催シンポジウム「生態リスク管理の実践~若手研究者による挑戦の軌跡~」が行われました。

本シンポジウムに当たっては、企画から運営まで、GCOEのリサーチアシスタント(RA)の方々が進めてくれました。RAの方々の成果発表の機会を設けて、どのようにプロジェクトに貢献しているのかを示すべきであるとか、GCOEメンバーの方々に、RAの活動を知ってもらうべきであるということで、私が思いついて言い出したことなので、実際に負担のかかった(とばっちりを受けた)RAの方々には申し訳なくも思っています。しかし、実際には、素晴らしい内容のシンポジウムになったと思います。企画、告知活動、準備、当日の運営など、RAの方々が主体的に進めてくれました。

当日の午前中にRAによる英語での口頭発表、シンポジウムではRAによるポスター発表が行われました。また、シンポジウムでは、フェローおよび私が講演をしました。講演では、RAの方々により提示していただいたテーマにそって、計7件の講演を行いました。

本COEでは、生態リスクの管理について、研究と教育活動を進めているわけですが、生態系のリスクといっても、非常に多岐にわたることや、管理には不確実性が伴うことなどが、個人的には再認識できたかと思います。また、個人的には、エコシステムマネジメントやエコシステムアプローチの概念について、新フェローの方と共有できる点が多々あったことに驚きと喜びを覚えました。

このようなRA主体でのシンポジウムは来年度も実施予定なので、興味のある方のご参加をお待ちしています。

 

オーストラリアへ

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クイーンズランド大学 The Ecology Centreのセミナーにおいて、講演を行いました。セミナーでは、カナディアンロッキーの山岳林における山火事体制に対する気候変動と人間活動の影響についての話をしました。 

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オーストラリア大陸はやはり山火事が多く、山火事の研究者が多いのですが、植生も山火事体制もずいぶんと異なります。アボリジニーが昔から火を利用してきたこと、そして、山火事体制や生態系に対して関与してきたことがよく知られています。また、東海岸では、エルニーニョを介した気候の変動による影響も大きいことが知られています。 

しかしながら、山火事体制に対する人為影響と気候変動の影響については、定量的には評価されていません。その点において、私の話が皆さんにとって有意義であったのであれば良いのですが。

 

ところで、ブリスベン郊外の自然保護区へエクスカーションに連れて行ってもらいました。場所は、Koala Bushlandsです。多数のユーカリ種から成る林で、コアラの痕跡(爪痕や糞)が見られましたが、コアラ自体は見かけませんでした。しかし、Swamp WallabyやSouthern BooBookが見れました。

 

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ところで、この林でも山火事の痕跡をたくさん見かけました。オーストラリアの東海岸はエルニーニョの時期に旱魃と山火事が起こります。そして、カナダやアラスカにおいても、エルニーニョの時期に山火事が起こります。北半球と南半球、非常に遠く離れた両地域において、同じテレコネクションの影響を受けることは、非常に興味深く思います。今後は、より広域的な現象にも焦点を当てていきたいと思っています。

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研究にまつわる写真

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