群集集合

1.生物群集とは?

生物群集とは,ある一定区域に生息する,生物種をひとまとめに捉えたものです。ある局所的な種の多様性を考えるときは,局所群集に含まれる種の数や個体数をもとに評価されます。局所群集のうち,木本植物群集,節足動物群集,微生物群集といったように,分類群を限定して,群集を評価することも多いです。

2.群集生態学

群集生態学では,群集がどのように形成されているのか(群集集合の規則)を説明することを目指します。また,群集内の生物の相互作用(捕食などの食物網の構造,エネルギーや栄養の循環など)を扱います。

たとえば,北方林や熱帯林といった,ある環境下でどのような生物群集が形成されるのかを解明することを目指します。このような研究は基礎生態学ですが,群集集合に関する知見は応用生態学的にも重要な意味を持ちます。たとえば,人間活動による影響を受けた場所の生物多様性の復元を目指す際には,自然のプロセスとしての群集集合則をもとにすることが重要です。具体的には,再植生や再植林の際に,自然に存在し得る種の構成をもとにし,種の再導入の順番や相対的な個体数を決定することができます。

3.偶然性と必然性の重要性について

生物群集の集合規則を理解するにおいては,ニッチ(生態的地位)の考え方がまず重要です。資源や空間の利用の仕方が種により異なることで,異なる種が共存できるという,ニッチの住み分け(ニッチ分割)の考え方です。時空間的な環境資源の変動により,ニッチの異なる種がそれぞれの環境要求に適した場所を見出し,存続できると考えます。ゆえに,ニッチの似通った種同士では,ときに競争排除が起こります。このような種の特性と環境条件により,必然的に局所群集に存在できる構成種が決定されるといった決定論的な考え方が,古典的に強く支持されています。

一方で,群集集合において,すべてが必然的に決まるわけではなく,偶然性の作用するところも大きいことが次第に分かってきました。たとえば,環境的に適した場所があっても,何らかの理由でその場所にたどり着けない(分散制限),先に到達した種により資源を占有されている(先住効果)などが生じると,環境条件に応じて一元的に出現種が決まるといった法則性が失われます。

現在の群集集合則の考え方では,必然性と偶然性の両者のいずれが卓越するのかを議論することが多いです。また,実際には両者が同時に作用しており,ある条件次第で,その相対的な重要性が推移することが分かってきています。たとえば,生産性の高い場所では,偶然性が相対的に卓越し,生産性の低い場所では,群集集合は決定論的に決まるといったことです。

私の研究では,必然性と偶然性の両者に着目することで,群集集合の在り方を模索し,生物多様性の形成プロセスを考えています。

4.生物群集が生み出す生態系機能について

どのような環境条件の場所にどのような生物群集が成立するのかといった疑問を解き明かすことは,生態学の古典的な課題です。このような生物多様性の形成プロセスを知ることだけに留まらず,群集生態学には,さらなる発展が見られます。最近では,さまざまな種により構成される生物群集,つまり生物多様性の高い群集は,高い生態系機能を生み出すことが知られるようになってきました。

「生物多様性→プロセス(機能)」の関係性に焦点を当て,実験や理論によりその関係性を解き明かそうとする一連の研究があります(生物多様性-生態系機能の考え方)。生態系の多くのプロセスは多くの生態系サービス(一次生産や土壌形成などの基盤サービス,気候調整や水質浄化などといった調整サービス)と密接に関連するので,生物多様性(分類群,機能群,応答群,系統群などの多様性)の豊かさが,ひいては多様な生態系サービスの恒常的な提供を可能にするとの考え方です。

この考え方に基づき,生物多様性が生態系の機能性を支えるメカニズムに着目しています。とくに,人間活動による影響下で生態系の機能性,ひいては,生態系サービスを保全あるいは復元するための方策について考えています。

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