2014年11月アーカイブ

豪雪地のメタ個体群

思えば2001年頃より細々と北アルプス・立山連峰の弥陀ヶ原で調査をしてきました。の後、2008年ごろに思いついたアイデアだが、諸々あってなかなかに研究が進まずにいました。012年より博士学生として指導することになった銭さんが、引継いでくれ、研究を再開し・・・。

ようやく日の目が出ました。多くの方からの協力を得て、まとまった成果です。みなさん、とくに論文にまとめてくれた銭さん、ありがとうございました。

内容は、弥陀ヶ原湿原と周辺の森林とで、空間的に断続したオオシラビソのメタ個体群の遺伝構造と形態的可塑性の関連性です。世界的にも稀な豪雪環境で、どのようにしてオオシラビソという針葉樹がほぼ独裁的に優占できるのかを説明しました。

Qian S, Saito W, Mimura M, Kaneko S, Isagi Y, Mizumachi E, Mori AS. (2014) Asymmetric gene flow and the distribution of genetic diversity in morphologically distinct Abies mariesii populations in contrasting eco-habitats. Plant Ecology 215: 1385-1397.


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銭さんと行った弥陀ヶ原(奥に雲海が見える)

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富山湾に沈む夕陽を望むと、ひたすら雲海が広がり・・・

この日、われわれはまさに雲海の最上部、雲と空の境界にいました。

生物群集の均質化

標記に関する論文が出版されました。

Mori AS, Ota AT, Fujii S, Seino T, Kabeya D, Okamoto T, Ito MT, Kaneko N, Hasegawa M. Biotic homogenization and differentiation of soil faunal communities in the production forest landscape: Taxonomic and functional perspectives. Oecologia : in press.

森林が人工林化(カラマツ林化)されることで、林床に供給される植物リターの供給が単純化されることで、リターに生息する土壌動物群集(ササラダニ)も単純化されることを示しました(どこもかしこも、カラマツ落葉ばかりで、その環境に適した一部種がどこでも占有しがちになる)。

さらに、伐採後に針葉樹を再植栽せずに放置し自然と広葉樹が侵入すると、森林の樹種組成が多様化し、結果として土壌動物群集も再異質化(多様化)できるということを示しました。

集約化林業は、森林に住む生物の構成を単純化する可能性があるということです。

研究にまつわる写真

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