北極圏ツンドラ
1.高緯度北極圏
急速な気候変化が認められる今,温暖化の影響に特にさらされる高緯度の生態系で,気候と植生の関連性を明らかにすることは重要と考えられます。そこで私は,カナダ高緯度北極圏・エルズミア島(ヌナブト準州)の山岳氷河の後退域において,植生の発達機構を明らかにするための野外調査を行ってきました。
2.氷河後退域の植生発達
氷河後退時期の形成年代の異なるモレーン上で植生調査を実施することで,完新世の温暖化に伴い,数万年かけて植生がどのように発達してきたのかを調べています。その結果,氷河交代後の時間とともに維管束植物種数が増加していくという,高緯度北極圏では非常に稀な植生発達のパターンが観測できました。
この植生発達パターンは,物理的な環境要因が生物の生育にとって非常に厳しい高緯度北極圏では,ほとんど見ることのできないと考えられています。私たちの研究により,この生物的な要因の強い植生発達様式が,北緯80度を越える極域オアシスで観察されました。