2013年4月アーカイブ

公開シンポジウム

共同研究者の方が来日するので、さまざまな方の協力を得て、公開シンポジウム(日本生態学会関東地区主催)を5月21日の夕方に開催することになりました。

テーマは、「生物多様性と生態系機能(biodiversity-ecosystem functioning)」です。以下が概要です。皆さんのご来場をお待ちしています。


2013年度日本生態学会関東地区会・公開シンポジウム
 「環境変動下の生物多様性と生態系機能」
"Biodiversity and ecosystem functioning under environmental change"

概要:

生命科学の主たるテーマとして、地球上にはなぜ生命の多様性があるのか、そして、生命の多様性にはどのような意味があるのかを解き明かすことが挙げられる。これらの問いに関連して、近年では、生物多様性が生態系の機能性やサービスをどのように支えているのかについての関心が高まっている。つまり、生態系(原生林、半自然植生、農地生態系などの異なる人為影響下の生態系を含む)に多様な生物種が組み合わさって存在することで、食料生産や気候の安定、災害の低減などといった、人間社会が求める数多の生態系の機能性が発揮されるのである。

現在、さまざまな環境変動が、自然に存在する生物種の組み合わせ(群集)を改変することが予測されている。その結果として、個々の群集の多様性により発揮される生態系の機能性が変質する可能性がある。このような(ときに望ましくない)変化を引き起こす要因の一つとして、気候変動、土地改変、窒素負荷などが挙げられる。

本シンポジウムでは、環境変動に伴い生物多様性がどのように改変されるのか、そして、多様性の変化が生態系の機能性にどのような影響をもたらすのかについて発表を行う。演者らは、北米とアジアの草地生態系を対象に、生物多様性と生態系機能の関係性(biodiversity-ecosystem functioning)に係る実証研究を実施してきた。長期研究により得られた知見をもとに、今後の多様性研究の展望について議論する。

日時:2013521日(火)15:30-18:30

会場:東京大学農学部7号館B2階 231/232号室

参加費:無料(事前申し込み不要

言語:英語(日本語解説あり)

企画者:森 章・古川拓哉(横浜国立大学)・佐々木雄大(東京大学)

15:30-15:45 概要説明(日本語)

15:45-16:15 Dr. Yu Yoshihara (Tohoku University, Japan)

「放牧地における植物や動物の種数の増加は生態系サービスを向上する(Increasing the number of species richness of plants and animals in grazed lands improves pastoral ecosystem services)」

16:15-17:15 Dr. Yongfei Bai (Chinese Academy of Sciences, China)

「気候変動に対する草地生態系の応答:モンゴル高原における実証研究(Responses of grassland ecosystems to climate change: Evidence from Mongolia Plateau)」

17:15-18:15 Dr. Forest Isbell (University of Minnesota, USA)

「植物多様性が変化した要因とその結果:多様性-機能性の長期観測より(Causes and consequences of changes in plant diversity)」

18:15-18:30 総合討論(日本語・英語)

詳細:生態学会関東地区会web ページURLhttp://www.esj-k.jp/

問い合わせ先:森 章(横浜国立大学環境情報研究院/日本生態学会関東地区会)


論文出版のバリア

査読のまわってくる量がさらに増えました。昨日の夕方に大物がようやく終わったと思ったら、直後にまた依頼が舞い込み・・・。

論文査読には貢献したいと思っています。しかし、査読者としての査読だけで(エディターとしての査読は除いて)常に4本ほど抱えている状態で、相当に時間を使っています。しかも、なぜか論文を出したことがない(出せたことがない)ような雑誌からも、結構依頼が・・・。むしろこちらの論文、受け入れてください。まあ、査読にさすがに飽きてきたので、ただの戯言です。

さて、最近査読に関するいくつかの議論を目にしました。われわれ日本人に関連する話としては言語バリアですね。生態学関連でもいくつかの議論があります。

言語バリア関しては、ネイティブスピーカーを著者の一人に招き入れることが、言語バリアによって論文が通らなくなるのを防ぐのに効果的であるという意見がある一方で、ネイティブスピーカーのベネフィットを増やすだけだという意見があります。

さらには、興味深いことに、英語を母語にしない著者による論文の割合は、雑誌のインパクトファクターのランキングが上昇すると下がっていくとの報告があります。つまり、いわゆるhigh-profile journalsといわれるようなところに論文を出版するには、ネイティブスピーカーのほうが断然有利らしいです(当たり前ですが)。ここで、興味深いのは、この傾向に地域差があることです。北米で出版される雑誌には、英語を母語としない著者の論文割合が、他地域の出版雑誌よりもさらに低いらしいです。

言語バリアは、厳密には個人の努力だけで完全には乗り越えられない課題ですね。ゆえに、上記の主張などでも、たびたび編集方針の転換や英語に係る編集サービスの提供、ダブルブラインドの査読などが提案されてきましたが、出版する側にはコストもかかるので、あんまり状況は変わっていないように思われます。

私は言語バリアに係る話題に関心がある(つまり、めっちゃストレスがある)ので、ここに記しました。