2017年1月アーカイブ

樹木多様性と土砂災害

日本全国の森林データベースと土砂災害データベースを用いて、樹木種数と表層崩壊に伴う土砂災害との関連性を評価した論文が、米国のEnvironmental Managemenrtにおいて掲載されました。筆頭著者は、修士2年の小林勇太です。

Kobayashi Y, Mori AS (2017) The potential role of tree diversity in reducing shallow landslide risk. Environmental Management : in press.

トヨタ財団ウェブページでもご紹介いただきました。

生態系をベースにした災害リスク低減(Eco-DRR)の可能性については、世界中で議論されているところです。この文脈において、とくに生物多様性の効果について着目されつつあります。たとえば、国際自然保護連合(IUCN)のRelief Kitと呼ばれるプロジェクトなどがあります。しかしながら、生物多様性が災害抑制や、あるいは災害からの復興に寄与するのかどうかは、実証に欠けているところが現状です。そこで、Eco-DRRのうち、とくに多様性の役割を評価しようと試みたのが本研究です。

結果としては、生物多様性が災害抑制に直接的に寄与するという実証は得られませんでした。しかしながら、多様性の間接的な関わりは見出されました。端的に述べると、樹種多様性を高く維持するような土地利用が、災害予測に係る不確実性を削減し得ることが分かりました。

樹木種数については、林野庁による「森林生態系多様性基礎調査」のデータを用いました。また土砂災害についても、国土交通省による「土砂災害・雪崩メッシュデータ」を用いました。日本全国をカバーする貴重なデータで、個人レベルではとても取得できません。有意義に活用させて頂きました。ただ残念なことに、両データ共にデータへのアクセスが限られており、土砂災害抑止により貢献するような樹種や森林タイプの特定などについては解析することすら叶いませんでした。ゆえに今回の結果は、あくまで多様性と災害の関連性の一端を示すものに過ぎません。特に個々の樹種の効果や機能的多様性などは興味深いところです。今後、可能であれば、樹木多様性と災害リスクとの関連性をより精査したいと考えています。

ウィーンへ

共同研究のためにオーストリア・ウィーンにあるBOKU Universityに滞在していました。結構いたので今回の記事は少し長いです。

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ガラス張りで明るい大学


ウィーンやオーストリアについては、とくに情報も知識もないまま出発しました。訪れてみて他の欧州の大都市(特に西側の)とは様々なことが異なることを知り、驚きの毎日でした。

相当な観光地であることもよく知らないままに来てしまいました。ウィーンのカフェ文化についても全然知りませんでした。

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城のような市庁舎とマーケット


今回は冬であることと、研究テーマがモデルを軸にしたものであるために、主に研究室訪問という形でした。毎日のようにディスカッションをし、論文を読みあい、ワークショップに参加しと忙しく、ウィーンの観光地らしい場所には結局ほぼ行かずに、忙しく今回の滞在を終えました。

ただ、12月は予想外に暖かい日が多く、期待していませんでしたがフィールドにも行けました。

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施業林の広がる景観

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ドナウ川沿いのCultural landscape


とくに印象的だったのは、ラボのメンバーで夜にカフェでビールを飲みながら、特定の論文について議論しあうことでした。オペラ鑑賞前の着飾った人々で賑わう伝統あるカフェでというあたりが、カフェ文化のウィーンらしく印象的でした。

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一見すると、ラフな格好で論文について議論するとかいう雰囲気ではなく、知らなかったら入るのに抵抗がありそうな場所でした。文化の違いですね。


今回はクリスマス時期に重なったために、街中にマーケットが出ていました。大学の前の何気ない公園でもマーケットが出ており、時おり大学の敷地内でもホットワインの屋台が出ているという、まさにクリスマス一色でした。

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大学前の公園にて


滞在先の学科全体(研究室が5-6個ある)の一年間の総括とクリスマスイベントにも参加しました。総括は、授業や実習の評価、学生からの意見、修士や博士の修了者数や要した年数、査読論文の公表数や査読回数、諸々の社会貢献、外部資金の獲得状況まで、あらゆることを数値化して評価していました。自分たちで設けた基準点があるらしく、それをクリアしたかどうかを全員で公開して評価するというイベントでした。これをすることで公正に内部評価をすること、大学からの運営金の配分状況が決まることなど、一大イベントのようでした。その場では、学科長が「成果を出さなければ各々が研究者である資格はない」と何度も強調して、全体を鼓舞していたことが印象的でした。

その年末総括会の後に、全員で歩いてこれまたウィーンらしい趣のあるワイナリーに行き、クリスマス会が行われました。ここでは学科長が、私を含む他国・地域からの訪問者に対して、多様性をもたらす存在として感謝を述べていました。有難い話で、とても居心地の良い滞在となりました。

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研究の方も思いがけず進展し、新たな展望が得られました。また他の中欧諸国の人々との研究交流の機会も得ました。

というわけで大変充実しました。また行きます。

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IPBES報告書の公開

IPBES Deliverables 3cの報告書、正式に承認されてからはや11ヶ月、ようやく公開されました。

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研究にまつわる写真

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