小林勇太
生物多様性に基づく災害リスク削減の可能性
産業革命以降の人間活動や環境変動は、全球的な生物多様性の損失を前例のないスピードで推し進めています。その帰結に対する危機感の高まりとともに、生物多様性と生態系の有する機能性やサービスの関係を解明するための研究が1990年代以降精力的に行われてきました。両者を結ぶ知見の急速な集約は、生物多様性保全に倫理的な価値のみでなく、実利的な価値があることを科学的に提示しました。
一方、生物多様性保全がすべての公益的な機能を扶持するわけではありません。特に災害対応の分野では機能性との関係について未熟さが指摘されています。しかし、健全な生態系を実現することで防災・減災を図ろうとする考えは、世界的に脚光を浴びており、多くの場で重要性が主張されています。しかしながら、背景にあるメカニズムが不明瞭なこの考えはコンセプトのみが先行し、理論的根拠を欠いた議論がなされていることが懸念されます。ゆえに、如何なるプロセスをもって生態系が災害リスク低減に寄与しているのかを解明する必要があります。そこで、森林生態系の多様性が有する災害防止機能に着目し研究を行っています。
業績
Kobayashi Y, Mori AS (2017) The potential role of tree diversity in reducing shallow landslide risk. Environmental Management : doi:10.1007/s00267-017-0820-9.