2014年3月アーカイブ

気候変動による影響の緩和と適応

IPCCの総会が現在、横浜で開かれているようです。

ニュースでも取り上げられていましたが、気になる表現が耳に入り・・・。

「気候変動による生物多様性の変化を抑制するための適応策を・・・」

大半の人が(研究者も含めて)まったくもって引っ掛かりを覚えない表現でしょうが、非常気になりました。

気候変動に対しては、緩和(mitigation)と適応(adaptation)をもって対処しようと考えられています(たとえば、われわれのかいた総説でも・・・)。

これらは完全に排他的なものではないと思いますが、気候システムへの影響を軽減すること(緩和策、たとえば土地改変に伴う温室効果ガスの排出抑制など)と、気候変動伴う社会や生態系における変化に柔軟に対応すること(適応策)は、別物です。

気候変動(近年の温暖化傾向が人為的な要因であれ、自然要因であれ)による生態系や生物多様性へのさまざまな影響不可避の事象が大きく、変化を抑制することよりも、変化に柔軟に対応することの方がより重要だと思います。

先の表現は、私にとっては、緩和と適応を混同した不適切な表現に聞こえます。

科学が社会に伝達される際の情報ロス(というかミス)は、ほとんどの方は些細と思うでしょうが、伝えたい側にとっては、ときに大きな損失を与え得ると思いました。

最近は、研究者の科学的倫理に関する報道をよく目にしますが、伝える側も聞く側も、リテラシーをもって情報の精査が必要ですね。

生態学会2014終了

今年もいつも通りに参加した生態学会、終了しました。

広島ははじめてではなかったのですが、原爆ドームははじめて見ました。
外国人が想像以上に多くて驚きました。

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学会では、いくつかのシンポ、集会に参加しましたが、われわれの発表は分解系の多様性―生態系機能の集会でした。そして集会から数日後、生態学会最終日の朝(日本時間)、PNASに統合的な論文がオンラインに掲載され・・・。

ひろく世界の動向に目を向けておかないと、後手後手に回りっぱなしになるとの危惧が増した国内学会でした。

人間と野生動物のコンフリクト

軋轢というのでしょうか。最近よく聞く話である気がします。

最近ある話を目にしました。以下、大半の方にとっては大した話ではないかもしれませんが、私個人の趣味としてのクライミングに関わっては、大した話もであります。

(クライミングの)専門誌に山梨県の瑞牆山のカンマンボロンと大面岩という岩場において、ハヤブサ繁殖時期の登攀自粛の呼びかけが載っていました。

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-瑞牆山不動沢の岩峰群-

気になって調べてみたところ・・・

1)ハヤブサ(ファルコン)の営巣に与えるクライマーの影響は昔から議論されてきたテーマであり科学論文もそこそこある。その結果、スコーミッシュ(バンクーバーの北にある州立公園)などでは一定時期登攀禁止になるエリアを設けている。

2)ハヤブサの繁殖に影響する要因は、クリフの標高・サイズ・傾斜・方位、卵を食べる捕食者の存在などである(Arambarri & Rodríguez 2010, Bird Studyなど)。ちなみに、大きくてスティープな崖程よいとの報告もある。

3)ハヤブサの卵の捕食者でるカラス科の鳥に匹敵するほどに、クライマーは悪影響があるとの報告もある(Brambilla et al. 2004, Ardeola)。

4)瑞牆山が国立公園(秩父多摩甲斐国立公園)内に位置する。

5)ハヤブサが環境省レッドリストのVU種である。

などを鑑みて、

「ハヤブサであることが確認されたならば」、繁殖時期の登攀自粛をする妥当性はあると思います。3-5月が妥当な範囲でしょうか。

ただし、対象となる可能性があるのは、上記の岩場だけではないかもしれません。ハヤブサの好む環境的には、不動沢の岩峰群や十一面岩も繁殖営巣の場所として利用される可能性があります。

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-瑞牆の森

予算と時間があれば自分で現地調査をもとにきちんと評価できるのですが・・・。

どなたか手伝い求む。

研究にまつわる写真

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