今夏も知床に調査に行きました。
7/9-19の11日間で、森林生態系における種多様性を評価するプロジェクトです。横浜国大、京大生態研、スウェーデン農科大学からの参加者に加えて、九大演習林、北大演習林からの応援もありました。皆様のご協力のおかげで、無事終了しました。
今年の調査は大変でした。去年は、調査といっても予備調査だけでしたが、今年は違います。何か月も前から準備を進めてきました。今回の調査は国内外から総勢26名にも及ぶもので、チケット、宿、車の手配だけで、かなりの労力を要しました。さらには、入林許可証の申請、国立公園内の行為許認可申請、ヒグマ対策にまつわる様々な準備、緊急時対応、事前の救命講習、大量の装備の準備と発送、保険、食事の手配・・・等々・・・、今まで行ってきた数々の野外調査に比べても、比較にならないほどの事前準備を要しました。
準備は私だけでできるものではなく、手分けしてマニュアルを3種類作り、装備の手配をして・・・。そして、あっというまに知床合宿の日がやってきました。
事前の準備が大変だっただけに、始まってしまえば、案外すんなりいくのでは?と思っていたのですが、大きな間違いでした。毎日、登山道を登り、時には片道3時間かけて標高差1000m以上も歩くことは、時間と体力の双方を消耗しました。そもそも悪天候で始まり、限られた日数の中で、それぞれの参加者が最も納得するデータを取るために、どのような戦略で限られた日数を使うのか?ヒグマも出没する中で、全員の緊張感をどのように保つのか?疲労と寝不足でみんなが疲れていくなかで、どのように日々の調査班を編成するのか?毎日同じ場所での調査ではなく、調査個所を転々と広げていく形のために、体力と余力に応じた調査班の編成が必要でした。
すべてが良い経験でした。
最後の日空港にて、SLUから来たGoran (Thor博士)が、「みんなが想像している以上に、このようなプロジェクトのマネジメントは大変だということは、自分自身の経験から理解できるよ。」と言ってくれた時に、ようやく重荷から解放された気がしました。
今回は、序盤の悪天候にも負けずに調査を続けたおかげで、後半ほど天候が持ち直し、終わってみれば、想像以上のデータが取れました。そして何よりも、データを取得できたことだけでなく、普段はともに作業をしない異なる分野の研究者、異なる所属・国の研究者と協働して作業し、寝食を共にすることは、学生にとっても教員にとっても貴重な経験だと思います。
連日、早朝からの野外調査に、相当量の歩行距離、帰ってからも今後の作業についての議論に、睡眠時間を削ってもまだまだ終わらない内業・・・、正直これほど全員が頑張れるとは思っていませんでした。ヒグマとも出会い、常にヒグマに対して緊張感を持ち続けることも疲労する原因だったと思います。休む時間も、個人の時間も全くなく、11日間も調査作業を続けることは、精神的にも身体的にも大変だったと思います。参加し、ハードな調査に負けずに協力してくれた皆さんに、本当に感謝します。大変だった分、得たものも大きかったと思います。
私自身も、調査の準備から、旅行の手配、外国研究者への対応、緊急時対応、現地作業の柔軟な進め方、集団での作業・生活における落としどころの見つけ方など、貴重な経験をさせてもらったと思っています。参加してくださった方々、本当にありがとうございました。今後、皆さんが会し、発表し合える機会があればと思っています。
・・・ただ、もう一回この調査をしろと言われると、正直なところ今はしたくはないです。無事に終わった今だからこそ、11日間とても楽しかったなと思えるというのが、素直な感想でしょうか。