2012年12月アーカイブ

価値観

今年を振り返ると、それなりに色々とありました。公私ともに学んだのは、人それぞれの価値規範の違いについてです。

自分が興味あることを、万人が等しく興味を持ってくれるわけではない。

同じ目標(たとえば、ある地域の生態系の保全や復元、ある地域の復興や発展)を共有していても、細やかなところでは、価値観が全然違うとか、優先順位が全く異なるとか、そのようなことは(当然ですが)多分にあります。

自分の価値規範が全てではないことは、普段から認識するように心掛けています。普段の授業においても、私の説明が私見に過ぎないときは、そのように明確に述べるようにしています。この説明が絶対的なものではないことを。自分の意見や価値観を押し付けがましくなりそうなとき、なったときは自戒するようにしています。

歩み寄りは大事だと思います。歩み寄りを妥協と勘違いしないことも大事だと思っています。譲れないことは譲れません。それも大事です。しかし、異なる価値観に全く耳を貸せないことは、頑固を通り越していると思います。価値観の多様性も重要視していくように、心掛けたいです。

今年、ある投稿論文において、もっと異なる分野、専門、地域の研究者の意見も取り込んだ内容に仕上げてほしいと、査読コメントで指摘されました。その通りです。もっと色んな意見、視点を取り込んでいけるように、精進しなければなりません。今この論文は、さまざまな国の方々に参加してもらうことで、よりよく改善しつつあります。

ライフワークとして取り組んでいる登山やクライミングでも、人ぞれぞれのスタイルがあります。自分が受け入れられないこともあれば、他人にとやかく言われる筋合いはないと思うこともあります。しかし、自分の価値観が全てではありません。

自分の価値規範を曲げずに、異なる価値規範を軽視せずに尊重すること、ともすれば相反する可能性がありますが、そのバランスを見失わないように。

というわけで、来る新しい年には、もっと柔軟に異なる考えを取り込みつつ、邁進したいと思います。

年の瀬

前回、成果が出て一息つけたと書きましたが、年の瀬のあわただしさの中、落ち着くことなんて全くなく、バタバタと過ごしていました。もうあと今年も残すところ1週間となりました。

さて、すでに来年以降の予定がいろいろと入りつつあります。研究の方では、来年から3年間、シュプンガー社より出版されている雑誌である、Environmental Managementの編集委員(Editorial Board)をすることになりました。Env Manage誌は、環境管理、資源管理について広く扱っている雑誌です。応用生態学に関するトピックも多く見られます。皆さん、ぜひ投稿をご検討ください。

そして、年明けすぐの1月12日に、秋葉原で開かれる日本生態学会関東支部のシンポジウムで講演をします。テーマは、研究留学だそうです。日本の大学より欧米の大学の方が、いろいろと恵まれていて良いですよ、というだけの愚痴話にならないようにしたいと思います。


環境変動と生物多様性

生物多様性に関する新しい論文が、Biological Reviewsに掲載されました。


多くの場合、生物多様性は生態系のプロセスを高めます。よく知られた例が、植物の一次生産で、生物群集の多様性が高いほど、群集全体としての生産性が概して高まります。他にも、在来種の多様性が高いほうが、外来種に侵入されにくいことが知られています。このような生物多様性と生態系の機能性の関係性について、環境変動(撹乱)を絡めて論じたものです。

生物多様性が高いほうが、ポリネーションやペストコントロール、生産性、有機物分解、などなどといった生態系が発揮する機能性が概して安定化すると言われています。ある種がいなくなっても、他の似た種(機能的冗長種)が同じ役割を担うことで、生態系機能が損なわれないためです(ざっくり述べると)。

このような環境変動下で生物多様性が担う役割について論じた総説です。とくに、生態系の突然変化(レジームシフト)や復性・柔軟性・適応性(レジリアンス)と生物多様性についての関連性を明確に解説したはじめての論文だと思います。

難しくなりましたが、要は成果が出て一息なのです。

研究にまつわる写真

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