9月28日、東北大学GCOEフェローの佐々木雄大さんに本学まで来ていただき、生態学的閾値(ecological threshold)についての講演会(本学GCOE主催)を行っていただきました。公開講演会は、本学環境情報研究院にて博士課程の学生を中心に行われている若手の集いを兼ねていたために、私のいる大野・酒井・森研究室の博士3年でRAでもある古川拓哉君の発表も行われました。
発表タイトルは以下の通りで、発表の要旨についてはこちらに記載されています。
「生態系管理における生態学的閾値の応用と課題」
東北大学生命科学研究科 COEフェロー 佐々木雄大
「閾値モデルの森林管理への応用:強度の燃料利用下にあるナイロビ近郊林における事例」
横浜国立大学環境情報研究院 COERA 古川拓哉
当日の様子につていは古川君のまとめてくれた 第54回公開講演会報告書.pdfに記載されています。
私としては、閾値が検出できるような突然の状態変化が起こるような場合が見れること、そのような変化(特に非可逆的変化)が生じる前に予防的管理が必要出ること、そのために閾値が重要な注目変数になることなどについて、理解を深めることができました。一方で、レジームシフトやレジリアンスの概念と、どのように概念的重複があり、どのように差異があるのかが、私はやっぱり理解できていません。
上記の報告書に記載されているように、応答変数に、群集組成を用いる場合と種多様性を用いる場合では、変化パターンが異なることが、両発表で示されました。攪乱強度が増していくと、群集組成の突然変化(abrupt change)が生じる点が検出され、多様性も急激に減少するようでした。しかし、多様性に関しては、攪乱強度(ここでは放牧と伐採)が低いところでも多様性の現象が見られ、しかもその変化は閾値変化ではなかったことが気になりました。最近、北米やアジアの放牧地で、grazing exclusionが種多様性を減少させることが報じられているので、長期にわたり里山や放牧地として利用されてきた場所での、利用排除が生物の多様性(種レベルだけに関わらず)を減少させる効果についても、critical pointを見出すことができないのかな?と思いました。つまり、over-useが生態系に与える影響について検証し管理に生かすだけでなく、under-useの影響についても評価できれば生態系管理や復元に生かせるのではないかと個人的に思いました。
今回の講演会で行った内容は、来年3月の日本生態学会札幌大会で、企画集会として提案する予定です。企画は、東京工業大学の岩崎雄一さんを中心に企画が進んでいます。