スウェーデンからそのままドイツにも行きました。ドイツを訪問するのは、11年ぶりです。
私のドイツのイメージは、スウェーデンと同様に、いわゆる林業先進国で、環境大国でした。ですので、スウェーデンとの差異がどこにあるのかが気になっていたのですが、今回の訪問で、聞いて見て、そして得た印象は、全然違うということでした。
私の印象では、スウェーデンよりも、ドイツはより日本に近いというものです。国土を覆っていたブナの森をドイツトウヒの人工林に大幅に転換し、本来優占しない樹種を用いて林業を行っている点や、あくまで木材生産がほぼ主眼であること、などです。フライブルク郊外から見下ろした景色は、人工林で覆われた日本の山のようでした。
もちろん、ドイツと日本の林業の相違点はたくさんあります。日本と異なり、ドイツでは、(少なくとも私の訪れた南部の州では)持続可能な形で(生産と消費、造林と伐採という点で)、林業が行われているようです。間伐手法、林道の整備、木材の流通経路なども、日本とは大きく異なり、日本よりも合理的かつ低コストで行われているようです。各地域に森林官が配置され、実際の施業への助言や管理を行っている点も、日本とは大きく異なります。植林地での施業方法なども、ドイツでの手法に大きく見習うところがあると思います。
日本では、人工林への転換後、戦後の60-70年しかまだ経っていません。ひとの寿命よりも短い時間しか経っていないので、人工林への大幅転換が記憶に新しいのかもしれません。一方で、ドイツでは、150年ほどの年月を経ているそうです。ひとの寿命よりも長い時間が経っているので、現在のどの世代の人も、人工林を主体とした山村風景が当たり前なのだと思います。ということは、日本でも、あと数世代後の時代には、人工林で覆われた風景が、人々のイメージする自然の森林の姿になるのでしょうか?
ドイツに比べて、スウェーデンでは、林業においても生物多様性に対する配慮が強いです(少なくとも私の印象では)。施業地であっても、自然林にあるはずのdead woodを残すことを重視していたり、retention systemを用いたりと、森林認証による要求が強いこともあって、相当に徹底されていると思います。もちろんスウェーデンにおいても、重機を用いて伐採を行うので土壌へのダメージが大きいことや、企業や工場が大規模化しすぎて不健全であることなど、マイナスの指摘も多くあると思います。ただ、スウェーデンの林業が、生物多様性を尊重するに対して、ドイツの林業はあくまで生産性と経済性における持続可能性を追求しているとの印象を受けました。
日本は、ドイツのように、主に広葉樹林を針葉樹林に転換して林業を行っています。生産と消費のバランスを考えた、より合理的な林業を行い、木材の自給率を高めるために、森林管理における見習うべき点はたくさんあるのでしょう。
一方で、ドイツでは天然林がほとんどないとのことです。98%の森林が経済林と伺いました。実際にオーストリアと国境を接する山岳地域ですら、フットヒルはひたすら人工林でした。日本は、森林率が高いだけでなく、歴史的に人口密度が高く、国土を人が利用してきたにもかかわらず、天然林や自然度の高い森林もまだまだ多くあると思います(山岳地に偏っているかも知れませんが)。ドイツの森林を訪れて、このような森林が発揮する生態系サービスには多くの可能性が秘められているとも感じました。