秋と言えば、ノーベル賞の発表時期なのですね。毎年秋に発表してましたっけ?
さて、今年は、とうとう京大の山中教授がiPS細胞の功績によりノーベル生理医学賞を受賞されました。おめでとうございます。日本の科学界における久々の明るいニュースだと思います。最近は、海外の学会や会議に参加しては、中国や韓国といった隣国の勢いを感じていました。科学技術において、多くの国と競うことは、自由競争の原則内であればとても健全だと思います。その意味で、今回の受賞は多くの日本の研究者にとって励みになったと思います。
iPS細胞の理論を現実の医療に応用するにおいて様々な問題があると思います。これからは、臨床における倫理的な問題や規制をクリアしていくことが課題だと言われています。この技術が、難病治療に役立つことを多くの方が心待ちにしていることと思います。画期的だが基礎的な知見だったことが、現実社会に還元されることは、とても重要だと思います。iPS細胞が本当に万能なのかどうかは専門外の私には全くわかりませんが、早期の実用化が望まれていることは理解できます。
ところで、少し疑問があります。ここでつぶやいても仕方がないかもしれませんが・・・。
今回のノーベル賞を受けて、iPS細胞の理論を基にした医療の高度化を想定して、日本政府はさらなるサポートをするでしょう(もう決定したとも聞きます)。先進医療へのアクセシビリティが向上することで、医療サービスが飛躍的に発展するかもしれませんね。この重要性に対して、まったく異論ありません。しかしながら、医療サービス以外の問題にも目を向ける必要があるのではないでしょうか?
日本は、先進国中でも相当に出生率が低く、そのうえ長寿なので、人口の構成が大きく偏りつつあります。若齢層の減少により年金問題も複雑化し、困難になっています。仮に、iPS細胞に支えられた医療技術の発展が、臓器移植や難病に対して飛躍的な効果を示した場合、平均寿命が延びる、あるいは高齢者層の個々の人の期待余命が延びるといったことが生じるとします。その場合、社会の世代構造として、その高齢者層を支える若齢層が相当に必要となるはずです。しかし、今の日本社会では、出生率の増加は望めない気がします・・・(多くの人が忙しすぎて、ワークライフバランスが崩れていることが多分に大きな要因でしょうか?)。
つまり、医療の発展や新しい技術の倫理的課題をクリアすることと並行して、社会構造の見直しなどをしていかないと、ますます世代構成が歪み、社会保障などの問題が複雑化するのでは?と不安に思います。iPS細胞がノーベル賞を取るほどの画期的な技術で、今後の医療を大きく変え得るのであれば、このような社会的な問題(しかも深刻だと思います)もいまから検討すべきなのではないでしょうか?
どうなんでしょう?私の杞憂でしょうか?少なくとも、「karoshi」という言葉が英語化しつつあるといわれる今、日本社会は医療の高度化以外にも課題が山積していると思います。政府には、社会保障、教育、科学技術をバランスよく発展させる必要性を忘れないでほしいです。
人口構成の問題にせよ先進医療の問題にせよ、私の貢献できるところは全く思いつきませんが・・・。いち研究者として、国の科学政策に期待と不安を同時に感じています。