最新のBulletin of the Ecological Society of Americaに、David LindenmayerとGene Likensによるエコロジーの原点回帰に関するコメントが掲載されました。私も非常に同感します。コメントは以下の3点の焦点に要約されています。
1)分類学や自然史に係る分野の衰退と、メタ解析やデータマイニング、モデリングへの偏重がある。後者は短期・廉価に出版へとつなげられる一方で、フィールドをベースにした古典的あるいは経験的な研究は時間も予算もかかる。この状況は、フィールド科学の分野の若手研究者に対して困難な状況を生み出している。
2)フィールドをベースにした定量的な研究は、定性的な意見論文よりも引用されにくい。
3)論文の文字数やページ数の制限が厳しくなっているので、ボリュームのあるフィールド研究を発表する場がなくなってきている。
究極的には野外の事象を解き明かすことを目的にしている生態学においては、メタ解析もレビューも、モデリングもデーマイニングも、実際のフィールドデータなしには成し得ません。非常に納得する内容だと思います。
私自身も、10年以上データを取り続けている調査地があります。同時に、他の方の取得したデータを使ったこともあります。時間も労力もかけてデータを取得するフィールド科学者が損をすることのないような状況が必要だと思います。