こちらカナダには、湖底堆積物を用いた過去の山火事体制の構築を目的とした研究を行いに来ています。Lab meetingの際に、この1年間で何をしたいのかを問われ、その旨を答えました。
私の印象では、古生態学的研究は、日本では非常マイナーであるある一方、北米では非常にメジャーな分野です。Natural Range of Variability(森 2010 日本生態学会誌を参照)に代表されるように、過去の環境変動と生態系の応答は、人為影響のなかった(あるいはきわめて小さかった)時代を参照とすることで、自然に起こる生態系の変動制やゆらぎを知りうることができます。この点において、古生態学研究は非常に重要な役割を果たしていると思います。
私自身は、花粉分析ができるわけでもなく、安定同位体の分析結果や、他の研究者の成果を基にして、過去の生態系の変動性を調べているにすぎません。なので、ここカナダで取り組みはじめた実践的な古生態学的は、私にとって新しい扉を開く機会だと思っています。
しかしながら、lab meeting前にEdと話したところ、古生態学の研究分野は、行き詰まりがあること、場所を変えることで新たな発見や応用性があっても、生態学全般に対する概念的な進展を示せるような発見はないと言われました。60年代頃に取り組んでいたことと本質的な違いがないとのことです。
私個人としては、調査地の国立公園における生態系管理に対して実践性の高い結果を示せることや、日本での応用性、共同研究者と進めているプロジェクトでの新規の発見内容など、取り組む価値のある課題だと思っています。しかしながら、同時に、注意深く現在の学問的な動向を見極める必要もあると思います。まあ、それはどんな分野やアプローチをとろうと当たり前のことですが・・・。