気候変動とレジリアンス

気候変動と生態系管理についてのレビューが(オンライン)出版されました。気候変動の文脈とは別に出来上がってきた生態系管理(エコシステムマネジメント)をどのようにして気候変動の文脈に乗せるか、気候変動に伴う変化や驚きに対応するためのレジリアンスの構築にどのようにして繋げるのかを論じたものです。

Mori AS, Spies TA, Sudmeier-Rieux K, Andrade A. (2013)  Reframing ecosystem management in the era of climate change: issues and knowledge from forests. Biological Conservation 165: 115-127.
さて、今年もカナダに調査と共同研究者らとの打ち合わせなどを行うために当地にやって来たところ、半年間の降水量が2日間で降るという記録的豪雨に伴い(6月20日前後)、フィールドステーションのあるカナナスキスや滞在先のキャンモアなどのロッキー山脈一帯は、大変なことになりました。ハイウェイは壊れ、一帯は避難対象になり、下流にあるカルガリーも相当な被害を受けました。
この洪水についてカナダでは連日報道されていますが、その中で、気候変動との関連性を述べる報道がありました。インタビューに答えていた研究者は必ずしも関連性があるとは言えないとしていましたが・・・。
そして、洪水騒動のあとは、北米西部一帯が熱波に襲われています(6月29日現在)。デスバレー(カリフォルニア州/ネバダ州)では、摂氏50度を超える気温で、近日中に記録を更新するかもしれないとのことです。カナダですら、ブリティッシュコロンビア州内陸部では、40度を超えてくる可能性があるとか・・・。
実際に、熱波と旱魃に伴い、コロラド州などでは山火事も起こっています。科学的確からしさの検討はまだですが、コロラドの山火事がカナディアンロッキーでの豪雨と洪水をもたらしたとの意見もあります。
人為要因による温暖化に伴い、豪雨、洪水、旱魃、熱波、山火事などの””極端な気候イベント(climate extreme)”が増加しているのかどうかは、まだまだ議論の余地があるところです。このような内容については、IPCCが2012年に報告書を出版しています。このことは、災害につながるような極端な気候イベントの頻度や強度が、人為的な温暖化に伴い増加しつつああることの(ある程度の)科学的なコンセンサスを示していると思われます(注:すべての災害が温暖化に起因するわけでもなく、今回の洪水や熱波、山火事のすべてが人為的な温暖化に起因する根拠もまだありません)。
まだまだ不確実性はありますが、(温暖化に伴う極端なイベントの)影響が顕在化する前に、対策を取り、有事の際には応をとる余地を生むためにも、ある程度の対応力としてのレジリアンスが必須です。今回は、このような災害リスクの低減(disaster risk reduction)に係る文脈を含むレビューを書きました。
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