自然撹乱

1.自然撹乱と生態系管理

撹乱体制の定量化は,生態系管理において重要な項目のひとつと認識されつつあります。私の研究では、自然撹乱に着目することで,生態系のプロセスに配慮した生態系管理(エコシステムマネジメント)を行うための指針を提示します。

2.撹乱の抑制が招いた問題

ほぼあらゆる陸域の生態系では,撹乱の発生は必然であり,避けることのできるものではありません。過去何万年,何十万年と,生物相は撹乱にさらされ,撹乱に適応し,進化し,生育してきました。

しかしながら,撹乱,特に地震や山火事などの大規模な撹乱は,人間社会においては災害であると捉えられ,しばしば排除の対象となります。その結果、地域によっては,撹乱があることで成立する群集や生態系が,本来の姿を失ってしまっています。

3.自然撹乱を模倣することの意味

森林伐採に見られるような,過剰な人為による撹乱も生態系や生物相に甚大な影響を与えます。そこで,森林の施業や伐採などにおいても,自然におこる撹乱を模倣することで,生態系への負のダメージを軽減する試みが世界各地で行われています。農業や林業のような,自然を改変し,そこから資源を得ることは,私たちの社会の成立や持続にとって,欠かすことのできないことです。しかしながら,生態系に配慮しない資源利用は,持続可能なものではありません。

4.マトリックスマネジメントという考え方

そこで,マトリックスというものに着目しています。マトリックスとは、「自然生態系,生態プロセス,生物多様性の保全を主目的にしていない景観中のエリア」と定義されます。つまり,マトリックスは,原生自然ではなく,農地や人工林,都市などに土地が転換された場所のことを指します。このマトリックスにおいても,生物相の保全に配慮することが求められています(マトリックスマネジメント)。

5.資源利用の在り方

私が生態系管理の中で考える持続可能な資源利用とは,生産量と消費量が釣り合えば良い(言い換えると,生態系サービスの供給サービスが維持できれば良い)というものではなく,生態系の機能や動態,生物相の多様性などを包括的に維持したうえでの資源利用だと思っています。私たちは,木質資源の利用に見られるような,人為の撹乱を生態系に与えており,それは避けることのできるものではありません。

そこで,生態系にできるだけ配慮するためには,自然撹乱を見本にするということになります。そもそも生態系には,様々な自然に起こる撹乱が存在してきたわけですから,自然撹乱体制を尊重することで,できるだけ持続可能な生態系管理が行えると考えています。

関連業績

Mori AS, Kitagawa R. (2014) Retention forestry as a major paradigm for safeguarding forest biodiversity in productive landscapes: A global meta-analysis. Biological Conservation 175: 65-73.

Mori AS (2011) Ecosystem management based on natural disturbances: Hierarchical context and non-equilibrium paradigm. Journal of Applied Ecology 48: 280-292.

森 章 (2011) 自然撹乱に基づくエコシステムマネジメント ―破壊される必要性.遺伝 65(5):20-27.

森 章 (2010) 撹乱生態学が繙く森林生態系の非平衡性. 日本生態学会誌 60:19-39.

森 章 (2010) 生態リスクマネジメントにおける留意点―非平衡性と変動性の観点から. 日本生態学会誌 60:337-348.

森 章 (2009) スウェーデンにおける生物多様性の保全に資する森林管理の試み. 保全生態学研究 14:283-291.

森 章 (2007) 生態系を重視した森林管理-カナダ・ブリティッシュコロンビア州における自然撹乱研究の果たす役割- 保全生態学研究 12: 45-59.

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